『◯ね』と言ってくる子が、3週間で『先生すげー』に変わった話
正直に言います。
クラス児童のレン君に「ミチ〜」と呼び捨てされた時、
私は心の底からブチギレました。
授業中に「◯ねば?」と言われた時にも、
顔から「サーッ…」と血の気が引いていく感覚を、
マジで味わいました(これは何度も)。
これって人権侵害でしょう、普通に…
※これは、以下の記事が大前提として書かれています。 本記事より、こちらを先に読んだほうが本質部分の理解がしやすいです。
でも、そんなレンがある時からは
「ミチ先生すげー!」と
惜しげもなく言ってくれるようになった。
一体、何が変わったのでしょうか?
私は、何を変えたのでしょうか?
なぜ体育では成功するのに、教室では失敗するのか
あなたも感じていませんか?
体育の時間、レンのような子はあなたの指示をちゃんと聞く。
むしろ率先してお手本を見せてくれたりする。
なのに教室に戻った途端、別人に。
「同じ男同士で指導しやすいはずなのに…」
「なんでうまく行かない…?」
「大の大人が、子供なんかに舐められまくっててダサ…」
そう思いながら、今日もまた、
何とか彼をねじ伏せようと厳しく指導してしまう。
でも状況は悪化するばかり。
実はこれには「はっきりとした理由」と
「すぐに改善に向けて取り組むべきこと」があるんですね。
※こちらの記事もあわせて絶対にお読みください。字数の関係で今回はこの内容に触れていません。が、この問題を解決するうえで欠かせない概念です。
思惑がズレて、正面衝突している
問題の根本は、
①あなたとレンの思惑が完全にズレている
②それだけでなく、正面からぶつかり合っていること
ここにあります。
レンの本音:
- ミチ先生に「男として認められたい」
- クラスで「かっこいい存在でいたい」
あなたの思惑:
- 「舐められちゃダメ」(権威の確立)
- 「静かにさせなきゃ」(統制への焦り)
この結果、何が起きるか?
レンは認められたくて、やんちゃでアピール。
あなたは統制したくて、厳しく指導で押さえつける。
まさに悪循環の完成です。
でも、この構造が分かれば解決策も見えてくる。
そう、レンの承認欲求を
「正しい方向」で満たす
ことが最優先事項、なんですね。
「正しい方向で満たす」とは
「エネルギーの向きを変える」こと
です。
※「いや…エネルギーの向きってなに…?」と思ったら、そんなあなたはセンス抜群です。こちらで詳しく解説しているので、この視点を知るだけで明日からクラスの見え方が激変します。
指導より関係性を優先せよ
もしあなたが、
「男性」
「体育会系」
「チームスポーツをやったことがある」
どちらかであれば、ひとつ質問です。
チームで結果を出すとき、最初に何をしますか?
人によって重視することは変わるかも知れませんが、
「仲間との信頼関係を築く」。
これを軽視する人はいないと思います。
これは教室でも、全く同じ。
指導の前に、まず関係性。
これは甘やかしではありません。
むしろ逆です。
信頼関係があるからこそ、
本当に厳しいことも言える。
チームスポーツと同じ原理なんですね。
(たぶん、スポーツで優秀な成績を修めた先生が、クラスをうまくまとめているケースが多い理由も、このへんに凝縮されていると思います)
男性教師のための3つの関係構築コツ
では、具体的にどうすればいいのか?
私がレン君との関係性を変える際に意識していた
ことを「3つに絞って」お伝えします。
コツ①:「共通の興味」を見つける会話術
レンが好きなものに、あなたも関心を示してみてください。
「おお、チェンソーマン!」
「デンジの戦い方、めちゃくちゃかっこいいよな^^」
たったこれだけで、レン君の表情は変わります。
「あ、この先生、俺のことを分かってくれるかも」
体育で培った関係性を、教室でも活用する。
これが第一歩です。
※この記事に、より具体的な取り組み方、やり取り例を書きました。
コツ②:「承認欲求」を満たす反応テクニック
たとえばレン君が休み時間に、
あなたのところに何かを持ってきた時、
どう反応していますか?
「忙しいから後で」 「今度にして」
こんな反応をしていませんか?
でも、ちょっと待ってください。
レンが持ってきたものに、少しでも関心を示してみる。
それがゲームの攻略法でも、YouTubeで見つけた面白い動画でも。
「おお!それ知ってるよ^^」「すごいじゃん!」
たったこれだけでも十分。
※これについては前回深堀りしました。
あなたが女性なら、こっちの方が取り組みやすいかも知れません(でも、性別に関係なく、前回と今回どっちも効果的なので、取り組みやすいところから始めてみるのがオススメです)。
ここで大切なのは、男性教師ならではの共感の示し方。
女性教師のような「優しい共感」というよりも、
「理解と尊重」の共感を示すことが意識できると、
次の「コツ③」がより生きてきます。
「おぉ!レン!」
「『意外と』センスあるじゃん!笑」
こんな感じの一言で、レン君の承認欲求は
満たされていったのだと思われます。
コツ③:「仲間意識」を醸成する声かけ
ここが一番重要ポイント。
レンを「問題児」として見るのではなく、あなた自身が
「信頼される上司」のスタンス
で接することです。
なぜ上司なのか?
それは、レンが本当に求めているのは
「対等な友達」ではなく、
「自分がついていきたい人」
「尊敬できるリーダー」だからです。
チームスポーツのあなたなら、この感覚は分かるはず。
従来のあなた(上からモード):
「レン!静かにしろ!」
「なんで言うことを聞けないんだ」
新しいあなた(信頼上司モード):
「レン、君の集中力、俺は知ってるからな」
「期待してるぞ」
この違い、伝わってますか?
信頼される上司は、部下を責めません。
期待を示すんです。
「君なりの理由があるなら聞くよ」
「予想してたより、ずっと良い!!」
こんな声かけを続けていると、
レンの中では確実に何かが変わり始めます。
「先生は、俺のことを信頼してくれてる」
この感覚が生まれた瞬間、
あなたへの態度は一変するはずです。
ただし、これは基本的なスタンス。
実際には、
・レン( = 実際のクラスの子)の性格
・クラスの雰囲気
・これまでの関係性
・先生本人のキャラ
等、全てを考慮した微調整が必要になってきます。
同じ「期待してるぞ」でも、
タイミングと表情で全く違う効果になりますからね。
レンが変わったきっかけ
実際に、私のクラスにいたレン君のような子が、どう変わったのか?
印象的だったいくつかの場面をお話しします。
①休み時間:共通の興味で距離を縮める
レン君がチェンソーマンの絵を描いていました。
以前なら「次の授業の準備をしなさい」と注意していたでしょう。
でもその時は違いました。
「おお、デンジか。このポーズ、迫力あるな」
彼の目が、一瞬輝いたのを覚えています。
②別の日の算数の時間:承認欲求を正しい方向で満たす
レン君が問題で手を挙げました。
これまでなら、正直、こう思ったでしょう。
「(…またウケ狙いか…)」
「(…本当は分かってないくせに…)」
でも今回は、じっくり待ってみました。
すると、予想外の答えが。
(間違ってはいましたが)。
「ちゃんと考え、ちゃんと間違った答え」
だったんですね。
「おおっ!良いね!良い間違いだ!」
「レンくんの勘違い、どこなのか分かる人いる?」
「みんなも、レン君の目の付け所は参考になるよ」
クラス全体の前で「頑張ったうえでの間違い」
を認められたレン。
誇らしげな表情を見せてくれました。
③数週間後の変化:信頼関係の確立
ある日の6時間目。いつもなら騒がしくなる時間帯です。
でもレン君が、自然にクラスをまとめてくれたんです。
「みんな、ミチ先生の話聞こうぜ!笑」
「聞いてあげないと、かわいそうだろ!笑」
照れくさそうに、でも
ひとつの「笑い」としてみんなに
伝えてくれた彼の姿。
その瞬間、恥ずかしい話ですが私は、
授業中にも関わらず嬉しさで
泣きそうになりました。
おそらく、このあたりから、関係性は
分かりやすく変わってきたと思います。
実践上の注意点
ただし、これらの方法を実践する上で、気をつけてほしいことがあります。
それは急激な変化を求めすぎないこと。
私も最初、すぐに結果を求めすぎて落ち込みました。
1日目に共感を示したからといって、2日目にいきなり模範的になるわけではありません。
また、他の子への配慮は絶対忘れずに。
レンばかりに注目していると、他の子が不公平感を感じることがあります。
全体のバランスを見ながら、少しずつ関係を築いていく。
これが成功の秘訣です。
※「262の法則」を意識してないと、「1人の子」とどんなに関係性ができていても確実にに学級崩壊に向かいます。
また、レンの場合はこの方法で上手くいきましたが、もしあなたのクラスにいるのが内向的なタイプなら、また違ったアプローチが必要かもしれません。
あなたも必ず変われる
最後に、あなたに伝えたいことがあります。
男性教師だから不利?そんなことはありません。
むしろ逆。
チームスポーツで培った「チームを一つにする力」「仲間を信頼する力」
これらは教室でこそ、最大限に活かされるべき武器です。
レンが「ミチ先生すげー」と言った時の、あの嬉しそうな顔。
きっとあなたも、同じ瞬間を体験できるはず。
明日の朝、「あなたにとってのレン君」に会った時。
いつもの「おはよう」に、少しだけ期待を込めてみてください。
「今日も頼むぞ、レン」
たったこれだけで、何かが変わり始めるかもしれません。
応援しています^^
PS.
私は、男性教師として本当に苦労しました。
同期の女性教師は保護者からの評判も良く、子どもたちともすぐに仲良くなる。
「同じ男同士で指導しやすいはずなのに…」
「なんでうまく行かない…?」
「大の大人が、子供なんかに舐められまくっててダサ…」
本当に、こんなことばっかり考えて毎晩、布団に入っていました。完全に自己嫌悪です。
でも、ある日気づいたんです。
私には私にしかできないことがある。
僕はバスケをしていたので、バスケで学んだ「集団としての力」「仲間を信頼する力」
これらは、決して女性教師には真似できない、私だけの武器だったんです。
レン君との関わりは、それからの私に本当にたくさんの学びをくれました。
「男の先生で良かった、って息子が言ってました笑」と、保護者面談で言ってもらえるようにもなりました。
あなたも必ず、同じ瞬間を迎えられます。
体を鍛えるように、教師力も鍛える。
筋トレと同じように、継続すれば必ず結果は出ます。
一緒に頑張りましょう。
また次の記事でお会いしましょうね^^