リュウヤくんが変わった瞬間:子どもの『何か』を見つける3つの観察法
・「関係づくりが大事です!」と言いながら、具体的な方法をぜんぜん教えない「名ばかり研修会」
・机上の空論ばかりで、現場の苦労を1ミリも分かっていない指導書
そんな現状に、嫌気がさしていませんか?
「関係づくりが大事って言われるけど、具体的に何をすればいいの?」
「問題児リュウヤくんとの距離、どうやって縮めればいいか分からない...」
4年目ほどの経験を経た先生なら、きっと
一度は感じたことのある悩みではないでしょうか。
私も同じでした。
教育実習でも初任者研修でも、
「子どもとの関係づくりが最重要」と
何度も聞かされました。
でも、誰も
「具体的に何を見て、何をすればいいのか」は
教えてくれませんでした。
正直なところ、キレイゴトばかりの教育論に
うんざりしていた私は、現場で通用する
やり方を試行錯誤のうえ、見つけるしかありませんでした。
あなたがいま感じている
「何から始めればいいか分からない…」
「どこを見ればいいか分からない…」
「関係づくりって抽象的すぎる…」
そういう悩みは、決して
あなただけが感じてるものでははありません。
多くの教師が陥る「思い込み観察」の罠
「子ども一人ひとりをよく見る」
これは教師なら誰でも聞いたことのある
基本中の基本。
でも、実際に教室で子どもたちを見ている時、
あなたは何を「見て」いるでしょうか?
後輩教員と話をしているとき、多くの場合、
無意識のうちに「思い込み観察」をしてしまってるな…
というケースをよく感じます。
(当然、若手時代の私も同じでした…)
「リュウヤくんは問題児だから、また何かやらかすに違いない」
「この子はおとなしいから、きっと真面目で優等生タイプだろう」
「家庭環境が複雑だから、荒れるのは仕方がない」
これらはすべて「思い込み」です。
実際に目で見て確認した「事実」ではありません。
私の経験上、思い込み観察をしている限り、
子どもとの信頼関係は築きにくいです。
なぜなら子どもってけっこう敏感に察知するから。
「この先生は、本当の僕を見てくれていない」
「どうせ私のことを決めつけてるんでしょ」
こんな感じで、子どもは大人が思っている以上に
自分がどう見られているかを理解しているんですね。
事実ベース観察が関係構築を劇的に変える理由
では、「事実ベース観察」とは何でしょうか?
それは、自分の先入観や思い込みを一切排除して
目の前で起きている「事実」だけを観察することです。
(私が勝手に名付けました)
・どんなペンケースを使っているか
・給食は完食が多いか、残すことが多いか
・休み時間、誰と話しているか
・図書室に行く頻度はどれくらいか
・どんな表情で授業を受けているか
これらは全て「事実」です。
あなたの解釈や判断が入っていない、
純粋な観察データですね。
なぜ、この事実ベース観察が関係構築に
効果的だったのでしょうか?
私の経験から、理由は以下の3つほどが考えられました。
1つ目:子どもは「見られている」を敏感に察知する
子どもは、大人が思っている以上に観察力が鋭いです。
先生が自分のことを「本当に見てくれているか」「決めつけで見ているか」を瞬時に判断します。
事実をもとに話をされた子どもは、「この先生は僕のことを分かろうとしてくれている」と感じる気持ちが強くなる。この感覚が、信頼関係の第一歩になるのだと考えられます。
2つ目:事実の積み重ねが信頼関係の土台となる
「○○が好きなんだね」
「いつも△△を大切にしているね」
「□□の時、とても集中してるね」
これらの言葉は、事実に基づいているからこそ、子どもの心に届きます。
思い込みや一般論ではなく、「その子だけの特別な事実」を伝えることで、特別な関係が生まれるのですね。
3つ目:思い込みではなく事実に基づく対応の威力
担任として事実を積み重ねていくことで、その子に最適な関わり方が見えてきます。
これは、本当に「担任力」を底上げしてくれると感じます。
「この子は絵を描いている時、とても集中している」という事実を知っていれば、「絵を通じて関係を深める」という具体的なアプローチが思いつくようにになりますよね。
思い込みではなく、事実に基づいた対応だからこそ、的確で効果的な関わりができると確信しています。
例えば、あなたのクラスに「リュウヤくん」がいたとしましょう
ここで、具体的な例を考えてみましょう。
あなたのクラスにも、きっとかつて私のクラスにいたリュウヤくん(仮名)のような子がいるはず。
授業中に立ち歩き、注意すると反抗的な態度を取る。
他の子にちょっかいを出すこともある。
多くの先生は、こういった子に対して
「問題児だから、厳しく指導しなければ」
「家庭に問題があるから、仕方がない」
「とにかく迷惑をかけないよう、静かにさせなければ」
と考えてしまいがちでしょう。
※このような子を別視点で捉えるにはこの記事がオススメです。有難いことに人気記事となりました^^
でも、事実ベース観察をすると、
全く違う一面が見えてくるんですね。
もしあなたのクラスにも、独特な個性を持つ子がいて、
具体的なアプローチを知りたい場合は、
記事の最後をご覧ください。
その前に、私が実際に経験した変化の過程をお話しします。
実際に、私が出会ったリュウヤくんのような子で、
観察を続けた結果、違った関わり方ができた例をお話しします。
明日から使える「3つの観察視点」
事実ベース観察を実践するために、
今日から使える3つの視点をお伝えします。
1. 日常の好み・興味を探る視点
まずは、その子の「好み」や「興味」を
事実として集めることから始めましょう。
観察ポイント例:
・どんなペンケースを使っているか
・筆箱の中身はどうなっているか
・持ち物にどんなキャラクターがついているか
・休み時間、どんな本を読んでいるか
・給食で好きなもの、苦手なものは何か
本当に、こんな感じの些細なことからでOKです。
大事なのは「とにかくこの子に関心を寄せる」こと。
教師は、意識しないとビックリするぐらい
「6割の子」を見ていません。
※以下の記事をまた読んでない方は、絶対に読むことを強くオススメします。
この法則を知ってるか否かで、今回の内容の定着度は10倍くらい違います。
(※とは言え、これは一人で集団をみる、いまの教育の仕組み上間違いなく仕方ないことです。誰のせいでもありません。が、、、)
リュウヤくんの場合、よく観察してみると、
以下のような「事実」が見えてきました。
・筆箱に小さな車のキーホルダーがついている
・給食のときは、必ず野菜から食べ始める
・休み時間には自分の席で、車や電車の本を見ていることがある
これらは全て「事実」ですよね。
ちなみに、この時点ではまだ特に解釈や判断は加えません。
ただ事実として記憶しておきます。
(私は記憶力に自信がないので、定着するまでは週案に書いておきました)
2. 人間関係を読み取る視点
次に、その子がクラスの中で
どんな人間関係を築いているか?を観察します。
観察ポイント:
・誰と一緒にいることが多いか
・どんな子と話しているか
・一人でいる時の表情はどうか
・グループ活動の時、どんな立場にいるか
・他の子から話しかけられる頻度はどれくらいか
リュウヤくんを観察していると、
意外な事実が見えてきました。
・授業中は騒がしくしているのに、休み時間には比較的静かな子と一緒にいることがあった
・図書室では、本を見ながら隣の子に「これ知ってる?」と優しい口調で話しかけていることがあった
問題行動ばかりに注目していたら、
絶対に気づかない一面だったと思います。
3. 得意・強みを発見する視点
最後に、その子の
「得意なこと」「輝いている瞬間」を見つける視点です。
観察ポイント:
・どんな時に集中しているか
・どんな活動で力を発揮するか
・他の子が困っている時、どんな行動を取るか
・作品作りの時、どんな工夫をしているか
・体育や音楽など、教科ごとの反応の違い
リュウヤくんの場合、
この観察では決定的な発見がありました。
図工の時間、リュウヤくんは別人のように集中していました。
しかも、隣の子が困っていると、
「こうやってやるといいよ」と自然に教えていたんです。
その瞬間のリュウヤくんの表情(というか目)は、
普段の反抗的な態度とは全く違う、
穏やかで優しいものでした。
こういう時の子どもは、
何と言うか「丸い目」をしています。
※伝わりにくかったらすみません、、、
この3つの視点で見えてきた、リュウヤくんの本当の姿
3つの観察視点で事実を積み重ねた結果、
リュウヤくんに対する私の見方は
根本的に変わりました。
(この時点で、リュウヤくんの私に対する態度には、まだ特に変化はありません)
・車や電車が好きで、詳しい知識を持っている
・実は面倒見が良く、困っている友達を助けたがる
・図工が得意で、集中すると素晴らしい作品を作る
・静かな環境では、とても優しい一面を見せる
のような感じ。
これらの「集めた事実」を踏まえて
関わり方を変えてみました。
「リュウヤくん、この車の名前、知ってる?先生は分からないから教えて」
「昨日の図工の作品、とても工夫されてたね。どうやって作ったの?」
「○○ちゃんが困ってる時、リュウヤくんが教えてくれたおかげで解決したね」
こうした、事実に基づいた
「その子だけの特別な関わり」を
意識しました。
結果からみると、リュウヤくんの態度は少しずつ変化していきました。
授業中の立ち歩きは完全になくなりませんでしたが、私への反抗的な態度は明らかに減りました。
そして何より、私がリュウヤくんを見る目が変わったことで、クラス全体をみる視点も、さらには雰囲気も。全く変わったのです。
この視点で教室が変わる
事実ベース観察を続けると、不思議なことが起きます。
それは、子どもへの見方が根本的に変化すること。
・「問題児」だと思っていた子の中に、隠れた優しさや才能を発見する。
・「おとなしい子」だと思っていた子の中に、実は強いリーダーシップがあることを知る。
・「手がかかる子」だと思っていた子が、実はクラスの雰囲気作りに貢献していることに気づく。
そして、子どもたちも変わります。
「この先生は、僕の本当の良いところを見てくれている」
「私のことを、ちゃんと分かろうとしてくれている」
おそらく彼らのなかにこのような感覚が出てきて、
それが信頼関係の土台となっていくのだと感じています。
関係づくりの「何をすればいいか」が明確になります。
その子の好きなものを話題にする。
その子の得意なことを活かせる場面を作る。
その子の優しさや頑張りを、具体的に認める。
全て、事実に基づいた自然なアプローチです。
あなたのクラスのリュウヤくんとの関係も、必ず変わり始めます。
明日から、ぜひ試してみてください。
完璧を求める必要はありません
「でも、毎日そんなに細かく観察する時間があるかな...」
「私にできるかな...」
そんな不安を感じているかもしれませんね。
でも、大丈夫。
完璧を求める必要は全然ないです。
一日一つの「事実」を見つけるだけでも十分。
週に一度、その子の良いところを具体的に伝えるだけでも効果は見えてくるでしょう。
というか、「週に一度」を意識していると、気がつけば常に「子どもに関心を寄せる」ことが習慣になっています。
私も最初は、うまくいかないことばかりでした。
でも、少しずつ続けているうちに、
子どもたちとの関係が確実に変わっていきました。
あなたも、きっとできますよ^^
最後に
有難いことに、最近は数件のご相談をいただくことがありました。その中でも「4年目前後」の先生は、特に悩みが深く、かつ以前の私と似ているな…と強く感じます。
「4年目なのに、まだこんなことで悩んでいるなんて...」そう思う必要はありません。
むしろ、4年目だからこそ感じる深い悩みがあるのです。経験を積んだからこそ見えてくる、子どもとの関係の複雑さがあるのです。
もしあなたが、あなたのクラスの「リュウヤくん」について、どうしても糸口が見つからず、具体的な状況をお話しいただければ、お力になれるかもしれません。
あなたのクラスにも「リュウヤくん」がいるということは、決して偶然ではないかもしれません。多くのクラスに、そんな子がいるのです。そして、多くの先生が同じように悩んでいるのです。
一人ひとりの状況は違います。だからこそ、個別の対応の仕方を相談することができます。あなたとその子の関係が、どのように変わっていくかも具体的にお話しできるでしょう。
ただし、本気で子どもとの関係を変えたいと思っている方のみです。
表面的な対処法を求めている方には、お役に立てません。
その覚悟がある方は、メールにてご連絡ください。遠慮は一切不要です^^
PS.
実は、私自身も4年目の時、同じような経験をしました。
クラスに、まさにリュウヤくんのような子がいたのです。毎日のように問題を起こし、私はいつも怒ってばかりいました。
もしかすると、あなたのクラスにも「リュウヤくん」がいるのではないでしょうか。名前は違っても、同じような特徴を持つ子が。これは決して偶然ではありません。多くの教室に、そんな子がいるのです。
当時の私は、完璧な教師になろうと必死でした。でも、うまくいかない現実に疲れ果てていた。
「4年目なのに、なぜうまくいかないんだろう」 「他の先生はうまくやってるのに...」
毎日そんなことを考えていました。あなたも、同じような気持ちになったことがあるのではないでしょうか。
ある日、疲れ果てた私は、その子をじっと観察してみました。怒るのをやめて、ただ見てみたのです。
すると、驚くことに気づきました。
その子は、私が怒った後、必ず小さくため息をついていました。そして、窓の外をじっと見つめていました。
その表情は、反抗的でも挑発的でもありませんでした。ただ、「何とも言えず寂しそうな様子」でした。
その瞬間、私はこう仮説を立てたんです。「この子は、私に怒られることで注目を集めようとしていたのでは?」
それからは、その子の良いところを見つけることに集中しました。些細なことでも、具体的に褒めるようにしました。
1ヶ月ほど経ってから、その子がちょっとした会話の中で、私にこう言いました。
「俺、先生に嫌われてると思ってたしw」
その時の安堵した表情を、私は一生忘れません。
そしてその瞬間、とてつもない「申し訳無さ」と「良かった…」という安心感を覚えました。完璧でない私でも、子どもたちと本当の関係を築けるのだと分かったのです。
あなたにも、必ずその瞬間が訪れます。
子どもは、本当に関わり方で違う姿を見せます。私たち大人が、それを見抜けずにいるだけなのです。
観察することから始めてください。事実を積み重ねることから始めてください。
あなたなら、必ずできます。
そして、もし困った時は、一人で抱え込まないでください。
あなたは、決して一人ではありません。
また、次の記事でお会いしましょう!^^