「LINE既読スルー」の感覚はクラスでも…?最近の教室はなぜ『居心地が良くない空間』になりがちなのか?
「あ...ユウタくん、一人で食べてる...」
遠足で最も楽しいはずの『弁当時間』。
ユウタくんが、木陰で一人
ぽつんと弁当を広げている。
「 …… 」
「みんな!ユウタくんも一緒に食べよう」
私がそう声をかけると、 子どもたちは
「えー...」と言いたげに、お互い視線をサッと見合わせる。
結局、数人が渋々輪に入れてくれたけれど
会話も弾まず、気まずい空気が流れている様子。
よく見ると、同じブルーシート内にいるのに
お互いの距離は離れている。一つの会話も見られない。
そんなグループもちらほら。
(…うーん...)
そんな何とも表現しにくいこんな気持ち
になったことはありませんか?
教育に携わる者として、
一人の子をほっとけない心情はもはや職業病。
「できるだけ楽しい時間を過ごしてほしい」
そう考え、すぐ対応する姿勢は、教師として
本当に立派かつ素敵な考えだと思います。
しかし、悲しい現実もあります。
実はこういう場面で、いかに
「仲間に入れてあげるよう求める言葉かけ」をしても
「その場を取り繕う対応」でしかない。
ユウタくんにとっては
「みんなに晒された屈辱」
「特別仲の良い子のいないグループに入れられた罰ゲーム」
といえる出来事かもしれません。
さらに(あまり大きな声では言えませんが)、
普段から関わりのない彼を
渋々受け入れてくれたグループの子からしても
迷惑である可能性も否定できません。
何より、根本的には
何の解決にもなってない。
「友達を作ることが全てじゃない」
「一人が好きな子もいる」
そういう考え方もあるでしょう。
でもそれは、人との関わりを何年も経験してきて、
そのうえで高校生、大学生とかになってから
本人が判断すればいいこと。
小学校段階で「一人が好きなはずだから...」と
教師が決めつけ、何の対策も打たないようでは、
決して良い対応とは言えないと思います。
実は、この問題の本質は現代の子どもたちにとって
『仲間づくりのハードルが高くなってきている』点にある。
つまり、担任として『誰とでも話せる教室』を
作れていない現実を素直に受け止める必要があります。
子どもが成長しやすい『安心感のある教室』とは
この記事を読む前に、必ずこちらをお読みください。
【説教が長い or 短いに関係なく、「ある大前提」を知っていないと全ての話は35人の誰にも刺さらない現実】について書いてます。※有難いことに人気記事になりました。
前回のこの内容を受けて、
21人の「人ごと感」を解消できたあなたが次に知るべき、
「安心感のある教室づくり」について
今回は書きます。
262の法則を意識し、
「一人への指導がクラス全体に波及するのは分かった。」
「でも、そもそも『安心感のある教室』って何だろう?」
「子どもたちが成長しやすい、学べる環境って、どうやって作るの?」
こんな疑問を感じていませんか?
実は、その疑問こそが今回の核心です。
安心感のある教室とは、
『誰とでも話ができる』雰囲気のある教室。
これが私なりの答えです。
そして、現代の子どもたちを見ていると
「誰とでも話せる」ことって、
想像以上に難しくなっているように感じるんですね。
「楽しい授業」だけでは足りない『安心感』
※本記事は、この記事の内容の実践編という位置づけです。
絶対に読んでください。
安易に「楽しい授業、テンポの良い授業をすれば良いクラスが作れるんだ!」みたいな考えは、けっこう危険です。現実の教室は、教師の授業スキル披露の場ではないし、いくら教師の授業スキルが高いと言っても、それだけで子どもが成長していくわけではありません。
まず最初に言っておきたいのは、
「楽しい授業」は確かに最強の学級経営
だということです。
私の教員経験を踏まえても、
これは間違いありません。
でも、そのための教材研究には
相当な時間が必要になってくる。
特に授業づくりに慣れていない若手時代は、
「そもそも楽しい授業とは何か」から
学びはじめなければならない。
それはある程度の長い期間を
かけて、ようやく少しずつスキルアップしていくのが通常です。
それは、「明日の教室」で
すぐに成果が見られるものでもないでしょう。
でも、実は「明日から」「すぐに」。
取り組めることもあるんです。
しかも準備時間は「ゼロ」。
意識するだけ。
もしあなたが「あと5分後には授業が始まる...」
そういう状況でも、意識さえすれば
すぐ授業に取り入れられること。
それは「ペア対話による相談タイム」です。
「ペア対話」という手法ついては、また機会をみつけて
別記事で取り上げたい非常に重要な内容ですが、
今回はガッツリとした「ペア対話」の実践法ではなく、
その概念をもとにした、特に簡単に始められる
「授業中の相談タイム」についてお話します。
これは本当にめちゃくちゃオススメです。
そもそも、「居心地が良い」「安心できる教室」では、
教師のちょっとした工夫で
勝手に『楽しい授業』になってしまう
ことが多いです。
「順番を決めるじゃんけんで大盛り上がり」
「学習のめあての一部を伏せ字にしただけで大考察大会」
こういう状況が自然に生まれてしまう。
今回の内容は、そんな状況に
クラスを持っていくための土台となる
「居場所づくり」なんですね。
安心感の本質は「誰とでも話せる」感覚。
現代の教室に潜む「話しかけづらさ」を解消することから始めましょう。
現代の子どもが抱える「話しかけづらさ」の正体
現代の子どもたちを見ていると、教室でも
『空気を読みすぎて疲れている』様子が見えませんか?
現代の子どもたちは全体的に
「人との気軽な関わり」が本当に
苦手になってきているように感じます
(私が教師になった時点で、既にそう感じましたが)。
例えばLINEでよくある
『既読スルーされたらどうしよう…』
『変なこと言って嫌われたらどうしよう…』
そういう感情と似た種類の不安が、
教室での関係づくりにも現れているように
強く感じます。
SNSの普及、コロナ期等、要因はいくつもあると思います。
が、教師である以上、そんなことばかり言っていても仕方ありません。
とは言え、この不安が教室全体の
「話しかけづらい空気」を作っているのは肌感覚としてあります。
「この子に話しかけて大丈夫かな?」
「変に思われないかな?」
「グループに入れてもらえるかな?」
こうした不安が、子どもたちの心の中に常にある状態では
「安心感のある教室」は作れません。
だからこそ、教師が意図的に
「誰とでも話せる機会」を
何度でも作ってあげる必要があるんですね。
授業中に取り入れる『相談タイム』で、誰とでも話せる教室をつくる3つのコツ
それでは、具体的にどうすればいいのか。
『ペアと話してみて』を言うベストタイミング3選
として、明日からすぐに使える方法をお伝えします。
ベストタイミング①:教師がわざと間違えた答えを提示するとき
会話例:
- 教師:「これは、こうだよね?」(わざと間違いの答えを提示)
- 子ども:「違うよ!」
- 教師:「えっ、そうなの?先生のやり方で合ってると思う人?違うと思う人?分からないな、って人?」
- 教師:「なるほど、分かれたね。じゃあ、自分の考えをペアに話してみて。」
この時、子どもたちの心の中はこんな感じでしょう。
「あ、先生も間違えるんだ」「自分の考えを言ってもいいんだ」「分からないって言ってもいいんだ」
ポイントは3つです。
まず、なるべく全員に話をさせること。
「賢い子だけが発言する」状況を避けるんですね。
次に、「間違ってもOK」「自分の考えをアウトプットすることが何より大切」という概念を、普段から繰り返し伝えていくことが土台作りとして必須です。
ちなみに、毎回同じ子が先に話すことを避けるため、
「じゃんけんで勝った方から言う」
「誕生日が今日と近い人から」
「家族の人数が多い人から」など
バリエーションを用意しておくと、
さらにお互いの理解も深められるし効果的です。
ベストタイミング②:「これ、難しくね…?」と子どもが困った顔をしたとき
会話例:
- 子ども:(算数の問題を見て)「うーん...これ、難しいな…」
- 教師:「おお、正直に言ってくれてありがとう。みんなはどう?」
- 教師:「『これ、ちょっと難しいかも』って思ってる人?『いや、大丈夫』って人?」
- 教師:「なるほど。じゃあ、まずはペアで『どこが難しそうか』話してみて。」
この場面で、子どもたちは「困った」を恥ずかしいことではなく、貴重な情報として価値付けされる体験をします。
困り感を共有することで「一人じゃない」安心感が生まれるんですね。
そして、「どこが難しいか」を言語化することで、思考が整理される効果もあります。
繰り返すことで、子どもたちの気持ちはこんな感じに変化していきます。
「困ってるのは自分だけじゃないんだ」「困ったことを言ってもいいんだ」「みんなで考えれば大丈夫」
ベストタイミング③:「あ、面白い意見が出たわ…」というとき
会話例:
- 子ども:「僕は○○だと思います」(ユニークな発想の意見)
- 教師:「おお、面白い考え方だね。みんな、今の意見聞いた?」
- 教師:「『なるほど、そういう見方もあるのか』って思った人?『ちょっとよく分からない』って人?」
- 教師:「じゃあ、ペアで『今の意見をどう思うか』話してみて。」
ここでのポイントは、一人の意見をクラス全体の学びに昇華させること。
262の法則を活用して、一人の気づきを21人に波及させる意識ですね。
とくに「上位の2割」の子が、
授業の重要ポイントをサラッと発言した
ケースなどでも効果を発揮します。
子どもたちは「面白い」「ユニーク」な発想が歓迎される雰囲気を感じ取ります。
「変わった意見を言ってもいいんだ」「みんな、ちゃんと聞いてくれるんだ」「自分の考えも大切にしてもらえる」
意識して継続すると、このような安心感が教室全体に広がっていきます。
誰とでも話せる教室では、子どもたちの目は「イキイキ」して「大きく」なってくる
これらの「相談タイム」を取り入れることで、教室の空気が確実に変わってきます。
誰とでも話せる教室では、子どもたちの不安が減り、自然と落ち着いた雰囲気になる。
何より分かりやすい変化は、
子ども達の「目」です。
私の感覚なのでしっかり伝わるか分かりませんが、
安心できる教室で生活する子たちの「目」は
・イキイキ(キラキラ?)している
・意欲的だから(?)大きく開いている
というイメージの目をしています。
こんな感じの目をしたクラスの子どもたちは、笑顔が多く、イベント時はもちろん、特に何もない時期でも「楽しい!」という気持ちが伝わってくる「ウキウキする空間」を実感できるようになります。
これは「管理」ではなく「居場所作り」
を意識する効果なんですね。
あなたのクラスでも明日から実践可能です。
「5分後に授業が始まる」状況でも、意識さえすれば取り入れられる。
準備時間ゼロで、子どもたちの安心感を育むことができるんです。
実践上の注意点
ただし、実践する上でいくつか注意点があります。
まず、「相談強要」は逆効果になる場合があります。
「必ず話しなさい」ではなく、「話したい人は話してみて」という雰囲気を大切にしてください。
次に、時間配分の現実的な課題。
授業の進度との兼ね合いは常に意識する必要があります。
話す機会を多く取り入れすぎると、それはそれで本題から遠ざかる要素も増えてしまうので、そのあたりは実践する中でバランス感覚を磨くことが大事ですね。
そして、学年や管理職への意識もある程度もっておくと良いでしょう。
正直なところ、これが定着しまくると、子どもは「教師が何も言わなくても、疑問に思ったことはすぐに話し始める」みたいな現象が起きてきます。
教室のあちこちで、それが普通になってくるので、見る人によっては
「…なんかこの教室、ずっとザワザワしてんな…」
みたいな印象を持たれることはあります。
私はこれを「意味のあるザワザワ」としてむしろ歓迎してますが、人によっては気持ちの整理が必要かもしれませんね。
今回の内容は以上です!
PS.
実は私も、若手の頃は「空気読み」を子どもたちに強要してしまっていました。
まだ経験の浅い◯年目(詳しくは忘れましたが)のある日、算数の授業中のこと。いつものように「静かに集中して問題を解きましょう」と言った時です。
クラスの中でも特に真面目なユウタくんが、小さな声でこう言ったんです。
「静かにするの、疲れる…」
正直、ビクッとしました。私は「良い子」を作ることばかり考えて、子どもたちが本当に求めている「話したい」「聞いてもらいたい」「つながりたい」という気持ちを無視していたんですね。
現代の子どもたちは、ただでさえ「空気を読む」ことに疲れている。なのに教室でも「静かに」「空気を読んで」と言われ続けたら、どれだけ窒息しそうになるでしょうか。
そんなことがあって、私は意識を変えてきました。
「静かにしなさい」ばかりではなく「今の気持ちを隣の人に話してみて」などにちょっと変えてみる。
授業中に話す機会を増やしていくと、意外なことに子どもたちの表情が明るくなりました。自然と笑顔が増え、学習への意欲も高まっていきました。
ユウタくんは後日、こう言ってくれました。
「先生、最近授業中、ちょっと楽しくなってきたかも」「相談する時が楽しい」。
とのこと。もちろん、クラス全体をザワザワさせすぎて、「なんで俺のクラスは常に騒がしいんだ…?」と悩んだこともありました。
でも、そこはうまく慣れて調整していくしかないんですよね。
私としては、このザワザワするクラスづくりは「やって良かった」と思える実践のひとつです。
あなたも、この方法を実践する中で、きっと細かな疑問が生まれてくるはずです。
「うちのクラスの場合はどう適用すれば?」「具体的にどんな言葉を使えばいい?」「時間配分はどう調整すれば?」
個別のケースでの調整方法について、遠慮なくご相談ください。
neotoriga2@gmail.com
あなたなら必ずできます。一人で悩まず、一緒に子どもたちの成長をサポートしていきましょう^^