なぜあの子は指示を聞かない?カギは『信頼ゲージの補充』にあります
「ふざけるな!」
「いい加減にしろ!!」
教室中に聞こえるヒロキの笑い声に、
思わずブチギレる私。
40秒前に「席について」と言ったばかりなのに、
彼はさらに声を荒げて友達と笑い合っている。
クラス35人の視線が私に集中している。
また先生、舐められてるやん...
そんな空気が教室を支配していく。
毎日毎日、同じことの繰り返し。
「なんで俺の指示だけ聞かないんだ」
「他の先生の時は素直なのに...」
そんな絶望的な気持ち
になったことはありませんか?
でも、実はこの瞬間こそが...
彼との信頼関係を深める絶好のチャンス
だったんです。
指示が通らない時は『信頼ゲージの補充チャンス』
結論から言います。
指示が通らない時は
『信頼ゲージの補充チャンス』。
この「逆転の発想」が大切です。
従来の発想:指示が通らない → 叱る・注意する
逆転の発想:指示が通らない → 信頼ゲージの補充チャンス
信頼ゲージがまだ満たされてない、と捉えると良いですね。
この発想を変え「大人の対応」をすることで
やんちゃな子との信頼関係をグッと深めることができます。
ポイントは「責める」ではなく「気にかける」こと。
前提:全体指示は従来通りでOK
まず誤解のないように。
全体の場で出す指示は、普通にこれまで通りやってください。
そもそも、教室で1日を過ごすなかでは、それこそ無数に指示を出す機会があります。
「状況を見て、この子にだけ別の指示を…」なんてやってる時間なんて、(悲しいですが)現実の教室にはありません。
教師の精神力にも限りがある。
なので、指示に関する一般的な内容は、書店で売られている書籍でしっかり学んだ方が良いと思います。
今回はあくまで私が指示を出すときに意識している「コミュニケーションの手段」としての指示について書いていきます。
つまり、全体の指示が通りにくい子に対して、個別に出す指示について、私が意識しているポイントをお伝えしますね。
信頼関係の重要性を理解する
信頼関係の重要性についてはこちらの記事で紹介しました。
今回は、こちらを読んでいる前提での内容です。
絶対に読んでください。
理解が10倍深まります。
その上で、今回は日々の指示場面での
具体的な関わり方の内容です^^
なぜ「信頼ゲージ補充」が不可欠か
やんちゃな子の問題行動の本質
やんちゃと呼ばれる子どもたちの行動の裏には、以下のような心理があります。
- 「認められたい」という強い願望
- 大人への根深い不信感
- これまで注意されまくってきた嫌な過去の記憶
彼らは、普段から「敵認定」されることに慣れている。
これまでの学年や、家庭での経緯もあることでしょう。
その背景を、しっかり前提として捉えておくことが必須。
「また怒られる」という前提で
ガードを上げている状態なんですね。
※これについては、こちら。大前提として、
確実に知っておくべき事実です。
指示無視の本当の理由
やんちゃな子が指示を聞かないのは、指示が理解できないわけではありません。
「この先生は自分をどう見ているのか?」を試している、と言えます。
子どもが「指示に反応しない」
「むしろ反発してくる」。
私はこれを、「信頼ゲージが満たされていないサイン」
と捉えています。
※そもそも「何者か」になれていない場合。
これが全ての元凶。
全ての注意は効果ゼロになってしまう危険性があります。
繰り返しになりますが、それくらい
目を背けてはいけない現実です。
この考えは、そもそも「全ての子どもを成長させて次に繋ぐことが、教師の役割」という大前提・信念に基づいてます。
本人が変わらなきゃ、この先も損し続けてしまう。
いま変えないと、今後また同じ苦しみを全員(本人、担任、クラス児童、家庭)が味わってしまう。
それを避けるために「今」。
覚悟と責任感をもって、
彼を成長させる。
これが私の強い決意です。
信頼ゲージ補充の心理的効果
信頼ゲージを意識した関わりを続けると:
- 予想と違う反応に戸惑う(良い意味で)
- 「この先生は違う」という認識が芽生える
- 心のガードが少しずつ下がり始める
- 「担任が常に気にかけてくれる」ことを実感し、自己肯定感が少しずつ上がっていく
必ずしもすべてうまく行くとは限りません。
が、上記のイメージをしっかり意識して対応をしていきます。
やんちゃな子との信頼ゲージ補充:具体的プロセス
実際に私のクラスにいたヒロキ(仮名:サッカー好き、授業中の私語・立ち歩きが多い)との事例でお伝えしますね。
算数の時間。「席について問題を解こう」という全体指示を、ヒロキは完全スルー。廊下側の席で友達と雑談を続けています。
従来のダメパターン
「ヒロキ、何度言ったら分かるんだ?」
「みんなに迷惑でしょ?」
↓
ヒロキの表情がさらに硬くなる。
教室の空気も悪くなる。
逆転の発想:信頼ゲージ補充アプローチ
【ステップ①】その場では深追いしない
全体授業は継続します。
ヒロキの様子を気にかけながらも、
他の子への配慮も忘れません。
35人全員に対して同じ想いを持っている
これが大前提です。
【ステップ②】休み時間にベランダで二人で話す
授業後、ヒロキに声をかけます。
「ヒロキ君、ちょっと良いかい?」
「ベランダで少し話そう」
【ステップ③】:信頼ゲージ補充の対話
担任の言葉(実際の会話例)
「あれから、調子はどう?」
「私としては、君が頑張ってくれてる様子が見られて嬉しく思ってるよ^^」
「ところで、さっきのことだけど。」
「…何の話か分かるかい?」
「何かあったのか、って心配になってね。」
「友達とのトラブル?体調悪い?」
「話を聞けない状態だったかも?と、担任として心配してるんだ」
「何かあったんじゃないか?」
重要ポイント
- 先に「頑張ってるところ」を認める
- 本人が「何の話か」を考える時間をつくる
- 「心配しているから声をかけてる」というスタンス
- 責めるトーンは一切なし
- 本当に心配している気持ちをしっかり伝える
- 信頼ゲージを補充する意識で関わる
【ステップ④】ヒロキの反応と担任の対応
ヒロキ:
「別に...何もないです」(戸惑い気味)
担任:
「そうか。でも、いつものヒロキと様子が違ったから気になったんだ」
「もし何かあったら、いつでも話してくれよ。」
「君が調子悪いと、私としては気になってしまうよ」
「ヒロキが頑張ってる時は担任も嬉しいし、困ってる時は心配になる」
「これは君だけじゃなく、クラス35人みんなに対して思ってることなんだ」
「だから、何かあったらいつでも声をかけて」
こういう姿勢を、しっかりと本人に伝えます。
※全てのセリフを言わなくても大丈夫です。
本質は「あなたのことを気にかけてるよ」という非言語メッセージを伝えること。しっかりと、本人にリスペクトを持って伝えます。
【ステップ⑤】フィードバックが最も大切
そのあと、担任の話を意識して、本人なりに実行してるな?
そういう場面が見られたら必ず本人に
「見てたぞ!ナイス!」
というサインを送ること。
これが最も大切なステップです。
あとから一言かけてもいいですが、
目でわかりやすくアピールしても良いです。
👍️とか👌サインを、彼にだけ
見えるように出すのも良いですね。
担任がしっかり見てることがうまく伝われば、彼の目が「恥ずかしそうに宙を泳ぐ感じ」「でも、ウルッと嬉しそうに」そんな様子が見られるはずです。
『非言語情報』はマジで大切です。
担任が意識してるか否かで、教室の雰囲気は
本当に変わってしまう。
その後の変化
多くの場合、多くの場合で
対話の直後から彼の態度は変わります。
- 授業が始まるチャイムが鳴ると、自然に席に着くようになった
- 私語をしそうになった時、私の顔を見るようになった
- 休み時間には、自分から話しかけてくるようになった
でも始めの段階ではおそらく
「気まずさ」から生まれる協力的行動。
「あんなに心配してもらったのに、いきなり破るのはな...」
みたいな感情。
だからこそ、の継続的フィードバックです。
続けることで、徐々に本物の信頼関係に
発展していく実感がもてるはずです。
信頼ゲージ補充は最高のチャンス
今回の内容を振り返ってみましょう。
指示が通らない時こそ、
『信頼ゲージを補充』する
最高のチャンス。
実践のポイント
- その場での深追いは避ける
- 一対一の場を必ず設ける
- 「全ての子を気にかけている」ことを伝える
- 信頼ゲージ補充の意識を持つ
- 『継続フィードバック』こそ全て
長期的効果
表面的な従順さではなく、しっかりとした
信頼関係の構築に繋がります。
逆に、「表面的な従順さ」を追い求めることで
このような問題が起きてしまう。
ぶっちゃけ、クレームが来てもおかしくない
とすら思います。
子ども自身の内発的動機が育成され、
クラス全体の信頼ゲージが向上し、
学級全体の安心感も向上していくな。
というのが、私の実感です。
実践上の注意点
私がやってしまったことのある失敗も載せておきます。
一度失敗すると忘れなくなりますが、できることならこの失敗は避けたほうが良いと思われます。
やってしまいがちな失敗パターン
- 演技っぽい「心配」は見破られる
- 一回で効果を期待しすぎる
- 他の子への配慮を忘れる
成功のコツ
- 「彼はより良く成長できるはずだ」と信じること
- 継続的な関わりを覚悟すること
- クラス35人全員への成長に向けた信念、責任感を持つこと
- 「信頼ゲージ補充」の意識を常に持つこと
PS.
私は若手教師の頃、指示が通らずに本当に悩みました。
たとえばケンジ君は、私の指示を一切聞きませんでした。授業中に立ち歩く、友達とおしゃべりする、宿題は提出しない。
毎日のように注意と叱責を繰り返していた私に、転機が訪れました。
ある日の給食準備時間。
友達といっしょに、私の周りで談笑していたケンジ君が、突然こう言ってきたんです。
「先生って、絶対この仕事嫌いでしょ笑」
その瞬間、私は言葉を失いました。正直、表情は引きつっていたと思います。この瞬間、イヤと言うほど強く気付かされました。
私は「指示を通すこと」にこだわり、「ケンジ君の成長を願う気持ち」を忘れていた。彼の心の奥底にある想いに、全く目を向けていませんでした。
その日から、私は子どもから「信頼ゲージ」を意識するようになりました(当時には、こういう言語化は出来てませんでしたが)。
その後の関係性の好転が、私の中で「信頼ゲージ」や「フィードバック」の大切さをより強く実感することに繋がってきたと思います。
もしあなたが、同じような悩みを抱えているなら。
指示が通らない場面を、ぜひ「信頼ゲージ補充のチャンス」として捉えてみてください。
各クラスの状況や子どもの特性によって、関わり方は、その都度微調整が必要です。
が、最後までしっかり読んでくださっているあなたならきっとできるはず。必要なら、いつでもお声掛けください^^
子どもたちとの信頼関係が変わる喜びを、ぜひ体験してほしいと思います。