"厳守"より"信頼"を優先せよ:子どもの心をつかむ時間の使い方
この記事は、かなりの覚悟で書きました。
私が実際によくやるやんちゃな子とのやりとりの本質を、かなり具体的に載せているからです。公開後に「子どもを、操るな!!!」と、批判がくるかもしれません。
なのでこの記事は『本気でやんちゃ君と関わる覚悟のできた人だけ』が読んでください。
こんな悩みがありませんか?
「時間を守らせたいのに、やんちゃな子が全然言うことを聞かない...」
「チャイム鳴ったよって言っても、完全にスルーされる」
「一体どうやったら、この子との信頼関係を作れるんですか?」
あなたがこの記事にたどり着いたということは、きっと同じような悩みを抱えているはずです。
毎日毎日「座って」「静かに」と声をかけ続けて、それでも変わらない現実。
「時間を守れば信頼される」と言われて実践したのに、子どもたちの目は相変わらず冷たいまま。
「じゃあ明日から、やんちゃな子にどう声をかければいいんですか?」
「『俺のことわかってくれてる』って、どうやって思わせるんですか?」
「『義理』って言葉は分かるけど、具体的にどう作るんですか?」
これらの疑問、全てこの記事で答えます。
時間厳守は結果。信頼関係が先。
まず、はっきりと言います。
時間厳守は「ただの結果」です。
それよりも「信頼関係の構築」が先。
多くの若手教師が「時間を守らせれば信頼される」と信じています。
しかし、これは完全に順序が逆なんです。
時間を守るから信頼される
ではなく
信頼されているから時間が守られる。
「…いやいや。。。前者のケースもあるでしょ…」
と思った方は、以下の記事もあわせてお読みください。
やんちゃな子との「義理」の作り方には、具体的な方法があります(義理、という考え方については、以下に詳しく書いています)。
それは「全肯定の一対一対話」から始まります。
そして、この方法を実践するには「本気で関わる覚悟」が絶対に必要です。表面的な対応では、絶対に効果はありません。
逆に、本気で関わる覚悟がすでにある方がこの内容を知れば、明日にでもできるやり方です。
(というか、できるだけ早い段階で実行するのが効果的だと思います)
なぜ一対一の全肯定対話が必要なのか?
やんちゃな子は「敵認定」されることに慣れている
考えてみてください。
やんちゃと呼ばれる子どもたちは、普段から注意される機会が圧倒的に多いです。
朝の会から帰りの会まで、一日中「座りなさい」「静かにしなさい」「やめなさい」の連続。
彼らの中で、教師=敵という認識が完全に固定化されています。
あなたが何か声をかけようとした瞬間、「また怒られる…」という前提で心のガードを上げられている状態、ともいえるでしょう。
彼らは「自分の思いを語る」経験が圧倒的に少ない
私の経験上、やんちゃと呼ばれる子は、先生の前で「自分の思いを語る」経験って、おそらくほとんど無かったのでは?ということをよく感じています。
基本はいつも怒られるテンションでの会話ばかり。
「全肯定」の空気で、自分のことをゆっくり話す機会なんて、一度もないんです。
本当の自分を理解されたことが、一度もなかった。
そういう前提で、彼との「全肯定の対話」を始めていきます。
「義理」は取引ではなく感情から生まれる
よく「私(担任)は時間を守るから、あなたも守って」という取引的な発想を見かけます。
しかし、このやり取りは、実は教師の「一方的な取り決め」になってしまっているケースが本当に多いです。
その問題については、以前の記事でも取り上げました。※以下です。
一方的な取り決めでは、子どもとの関係性はほとんど深まらないばかりか、「本人の成長」という観点でも、あまり期待はできません。
そこで、上記の記事で私が提案したことが「義理」という考え方です。
「義理人情」の、あの「義理」です。
「義理」というのは取引ではありません。感情から生まれるものです。
「この人との約束は守りたい」
「この先生を裏切りたくない」
そういう気持ちです。
そして、この感情は、何より「自分の人格を尊重されたことへの感謝」から生まれるものと考えられます。
やんちゃな子との「最初の信頼関係」を作る完全プロセス
ここから、私が実際にやっていた方法を、かなり具体的にお伝えします。
【事前準備:やんちゃな子の「強み」を徹底的に探す】
まず、徹底的な事前準備が必要です。
【ステップ①】本人から「なりたい自分」を聞き出す
普段の何気ない会話で探ってください。
「将来の夢は?」「好きなことって何?」「得意なことある?」
そして、さりげなく核心を突く質問。
「〇〇君って、本当はどんな自分になりたい?」
こんな感じで、「彼の心の叫び」みたいなものを探っていきます。
※「不満」みたいなものでもOK。不満には「彼の本当の希望」が隠されていることが多いです。
【ステップ②】保護者から情報収集
家庭訪問や懇談会で、必ずこう聞いてください。
「どんな子に育ってほしいですか?」
「家庭での素敵なところを教えてください」
家庭での一面を把握することで、学校では見えない強みが見つかります。
【ステップ③】担任自身の視点で強みを発見
これが最も重要です。
「ぶっちゃけ、この部分では俺は勝てないな」
そう思える部分を探してください。
そして、4月から現在までのポジティブな変化を記録してください。まだ達成してなくても大丈夫です。「頑張ろうとしている」「意識している」、それだけで十分なんです。
【実践:タケシとの一対一対話】
以前、私のクラスにタケシという子がいました。授業中の立ち歩き・私語が多く、毎日「座って」「静かに」と注意されていました。
掃除時間を使って、教室のベランダで一対一で話すことにしました。
✅️ 全肯定での対話
「タケシくん、良いかい?ちょっと話があるんだ。」
「なんで呼ばれたか分かる?」
タケシは当然、「また怒られる」と思って身構えました。
しかし、私はこう続けました。
「君は本当に、すごいやつだよな。実はいつも感心しているんだ。」
「今日は、君の日頃の頑張りについて話したくて呼んだんだよ。」
タケシの表情が、一瞬で変わりました。
✅️具体的な強みの伝達
「4月の頃を思い出してみてほしいんだ。」
「あの時と比べて、タケシは確実に成長している。自分で気づいてるかい?」
「例えば、先生が注意した後の君の表情。『頑張ろう』っていう気持ちが伝わってくるんだ。それって、すごいことだと思うんだよね。」
ここで重要なのは、「まだ達成していない」ことでも構わないということです。
「頑張ろうとしている事が、担任に伝わっている」
それを伝えるだけで、まずは十分なんです。
✅️自己評価を促す(本人にできるだけ多く話してもらう)
「自分としては、10点中何点ぐらいできてそう?」
このように質問します。すると、タケシは少し考えて、
「うーん...3点くらいかな」と答えました。
「そうか。どうしてそう思ったんだい?」
ここからが重要です。
徹底的に傾聴します。
どんな答えでも、肯定的に受け止めます。
ポジティブな内容でも、またはその逆でも
「ほう。」「なるほど。」
「そう考えたのは、どうして?」
と、徹底的に自分自身の考えを引き出します。
もし「そもそも、自分が頑張れてるとは思わないです」と返されても大丈夫です。
「なるほど、そう感じるんだね。でも、そうやって自分のことを振り返って考えられるって、それ自体がすごいことだと思うよ。」
「じゃあ、君はどういう事ができれば、『頑張れた』って感じることができそう?」
このように、とにかく自分を振り返らせることが大切。
「最近の自分の行動を、客観的に見てみようか」ぐらいの意識で関わってみましょう。
✅️全肯定の空気で徹底的に話してもらう
このとき、指導や注意は一切しません。
一旦置いておきます。
「君の成長を願う担任」という姿勢を一貫して保ちます。
この対話の目的は、彼が「普通に」「冷静に」話せる機会を作ること。しかも、「全肯定の姿勢」で。
タケシ君も最初戸惑っていましたが、だんだん自分の思いを話し始めました。
✅️関係性の確認と継続の約束
「よし、ありがとう!話せてよかった。君のことがもっとよく分かったよ。」
「やっぱり、君は素敵なやつだな^^」
「今後も定期的に話したいんだけど、良いかい?君の成長を、一緒に見ていきたいんだ。」
タケシは、なんとも言えない表情をしていました。
戸惑いと安心(?)が混ざったような、そんな表情でしょうか。言語化しづらいですが、たぶんこういう時の表情が「セロトニン」が出ている瞬間では?と個人的には思っています。
おそらくこの瞬間、彼の中で「この先生は敵じゃない」という認識が少なからず芽生えたからこその、この表情なのだと捉えています。
そして、これが。
担任が彼にとっての「何者か」になる瞬間
のひとつとも思っています。
【結果:その後のタケシ君の変化】
多くの場合、対話の直後に、彼の態度は変わります。
タケシ君の場合もそうでした。
たとえば
・授業が始まるチャイムが鳴ると、自然に席に着くようになった
・私語をしそうになった時、私の顔を見るようになった
・休み時間には、自分から話しかけてくるようになった
・困った時には、相談してくるようになった
など。
でもたぶんこれは、「先生との約束だから」という意識が芽生えたから、では無いと思います。
始めの段階ではシンプルに
「あんなに褒められたのに、いきなり破るのはな…」
みたいな気持ち。
つまり「気まずいから、今は守っとくか」
みたいな感情だと思います。
でも、悪い気はしていない、という状態。
そしてさらに大事なのが
・その後にしっかりとフィードバックをする
・本当に、その後も継続的に励まし続ける
ことです。
最初の対話をしたとき、「気まずさ」から彼の行動は変化を見せるでしょう。そこを見逃さないでください。
帰りの会の前に、もう一回本人に、サラッとフィードバックをします。
「(…さすが!👍️)」
「(ナイス!見てたぞ!👌)」
みたいな感じですね。もちろん、直接言ってもOKです。
でも、残念なことに次の日にはきっと
ほとんど元に戻っています。笑
だからこそ、
定期的に対話をしていく必要があるんですね。
内容は、一回目と同じです。
担任が彼の頑張りを
見つけ、認め、労い、称える。
はじめはすぐに元通りになってしまっても、
継続すると、彼の行動は、徐々にポジティブな方向に
変化が見られるはず。
継続的に自己評価し、認められ、自分の想いを表出する場がある。
それだけでも、彼の「心の居場所」が確立され、気持ちが安定し、生活自体が落ち着いていくのだろうな、と彼らを見ていると本当に感じます。
これが私の言う「義理」です。
彼の中に「この先生との約束は守りたい」という気持ちです。
授業時間はきっちり守れば良い
ここで重要なことをお伝えします。
「時間を守らせなきゃダメですよね?」
そう思っているあなた、安心してください。
授業時間は、引き続き、きっちり守れば良いんです。
この方法は「時間を軽視する」ことではありません。
信頼関係を作った上で、「なぜ時間が大切なのか」を伝える方法なんです。
タケシ君に限らず、私はクラスで毎年、数回に渡って以下のような話をします。
「みなさんは、時間って何だと思いますか?」
「なんで先生は、『時間を守りましょう』って口うるさく言うのかね?」
子どもたちは
「時間のけじめをつけることが大事だから」とか
「大人になって困らないように」とか言うことが多いです。
もちろん、それは全て間違いではないと思います。
でもそこであえて「担任としての時間の捉え」を以下のように伝えています。
「私が思う時間とは、『命』のことだと思います。」
「みんなは、大切な命の時間を使って学校に来て。そして教室で一緒に学習している。」
「だから私は担任である以上、あなた達の命。
つまり時間を大切にしたいんです。」
信頼関係が構築できていないと、このような話をいくらしても、なかなか彼らの中には入っていきづらい。
教師と児童。お互いの関係性が全ての基本です。
実践上の注意点と私の失敗談
注意点
1. 「甘い先生」批判への対応
他の教師から「甘いぞ」と言われる可能性はあります。私も言われていた可能性は大いにある。
「そんなの気にせず、結果で示しましょう!」と言いたいところですが、正直、これは年内に成果がイマイチ分からない場合もあります。
しかし、逆に。私が数年経っても、かつて担任した子たちからよく連絡をもらえるのは、こういった「すぐに結果が見えない部分」を大事にしているから、だとも考えられます。とは言え、やんちゃな子との関係が改善され、クラス全体の雰囲気が変われば、必ず理解はしてもらえます。
2. 時間確保の現実的な困難
掃除時間を免除するのは、他の子への説明が絶対に必要です。必ず、その場で他の掃除メンバーに「タケシ君と大切な話があるから、すまないけど、今日はタケシ君抜きで清掃をしてほしい」と正直に伝えましょう。
「タケシは、変える前に先生と教室掃除をして帰らせるよ」と伝え、実際に二人で別の清掃をしてもOKです。
3. 全ての子に同様の対応は時間的に不可能
今回の取組は、けっこう時間をとります。一回の話につき、私は10〜15分は確実につかって話します。それぐらい確保しないと、なかなか深い話にたどり着かない。
なので、今回の取組に限っては、特に関係性構築が必要な子に対して行ってください。
全員に同じことはできません。
が、全ての子を「認め」「労い」心の居場所を確保することは
必須中の必須です。
必ず、別の形で他の子とも積極的に関わっていきましょう。
そのやり方は、これまでの記事にもたくさん書いてきたので、過去記事を参照してみてください。
また、今後の記事でもどんどん紹介していきますね^^
(なにか詳しく知りたい内容があれば、遠慮なくご連絡ください)
私の失敗談
私も最初は「褒められればいいか」ぐらいに考えていました。
でも、そんなことは無かった。
表面的な褒め言葉では、ほぼ効果はありませんでした。
この記事に詳しく書いています。
「今日は頑張ったね」
「偉いね」
こんな言葉では、やんちゃな子の心は動きません。
本気で向き合う覚悟を決めて、「この子の本当の強み」を見つけるまで、相当な時間がかかりました。
でも、その苦労があったからこそ、しっかりとした関係性を築くことができたんだと思います。
明日から、あなたの教室も変わります
時間厳守は結果です。信頼関係が先なんです。
やんちゃな子との「義理」は、今回紹介したような方法で作ることができます。
実際に、私は毎年必ず、この対応を行っています。
全肯定の一対一対話が、全ての始まり。
やんちゃな子との関係で悩むのは、当然のこと。
なのに、こういった内容の話は、初任者研修でも
ほとんど聞くことができないのが現実です。
繰り返しになりますが、
魔法の教育法ではないです。
「誰にでも即、効く!」
「やんちゃが劇的に変わる!」
「どの教師がやっても再現性100%!」
そんな方法でもないかもしれません。
でも、本気で向き合って、しっかり続けることで
必ず変化は起きます。
この記事を最後まで読んだあなたなら、必ずできます。
明日からの実践で、あなたの教室の空気が変わります。
一人で抱え込まず、経験者に相談することも大切です。
あなたなら、必ずやんちゃな子との
信頼関係を築くことができます。
応援しています^^
一緒に頑張りましょう!
PS.
若手時代の私は、完全に絶望していました。
「なんで言うことを聞いてくれないんだ」
「俺は時間を守ってるのに、なんで伝わらないんだよ…」
毎日毎日、同じことの繰り返し。注意して、また注意して、また注意して...
表面的な対応では、絶対に変わらない現実を、毎日突きつけられていました。
そんな時、ある先輩から厳しい指摘を受けました。
「お前は子どもと向き合ってない。自分の都合で時間を守らせようとしているだけだ」
その言葉に、私はビクッ…っとしました。
確かに、私は「時間を守らせること」に必死になっていた。でも、「なぜその子が時間を守れないのか」「その子は何を求めているのか」ということには、全く目を向けていませんでした。
その日から、私は「本気で向き合う覚悟」を決めました。
最初の成功体験は、今でも鮮明に覚えています。
やんちゃだったユウキという子が、初めて私に心を開いてくれた瞬間。
「先生、俺のこと分かってくれるのか?」
そう言いたげな彼の目を、私はたぶん一生忘れないでしょう。
もしあなたが、同じような悩みを抱えているなら、一人で悩まないでください。
この方法を実践する中で、きっと細かな疑問が生まれてくるはずです。
「うちのクラスの〇〇君の場合は、どうすればいいですか?」
「こんな場面では、どう対応すればいいですか?」
一人一人の子どもに合わせた調整が、必要になってきます。
そんな時は、遠慮なく相談してください。同じ道を歩んできた者として、必ずお答えします。
あなたなら必ずできます。
子どもたちとの関係性が変わる喜びを、ぜひ体験してください。
共に成長していく仲間として、あなたの実践を心から応援しています。
メールでの相談はこちらから:neotoriga2@gmail.com