【よくある『やんちゃ対応』11の間違い】Part⑧:
子どもにマイナス言葉を言い過ぎると、聞かずにスルーされてしまいます。言わない方が効果的なときもある。そんな時は「目力」で伝えましょう!目線でメッセージを伝え、コントロールします。
「目で伝える」だけじゃ、伝わらない子がいる
・(…分かるよな?)と強く念じて「ギィ…!!」っと睨みつけたのに、それに全く気づかずヘラヘラ笑っているやんちゃ男子。
・授業中、何度も視線を送ってみたけれど、全然気にせず私語を続ける女子グループ。
・教室中に届く声で「見ていますよ」と伝えても、まるで聞こえないかのように授業と無関係な筆記用具で遊び続ける子ども。
口で注意せず『目で伝える』指導法。
この対応法、あなたの教室では
通用していますか?
「目力」に頼りたくなる誘惑
教師として子どもに注意する際、
私たちは様々な誘惑に駆られます。
・注意したら、ウザがられるかも…
・うるさい担任だと陰口を言われるのは嫌だ…
・できるなら、子どもから嫌われたくない…
こうした思いから、言葉による明確な指導を避け
「目力」に頼ろうとしてしまうことがあります。
書籍やブログ記事、ベテラン教師からのアドバイスにも、
「言葉より目で伝える方が効果的」という内容も見かける。
でも、実際はどうでしょう?
私も含め、多くの若手教師がこの
「目で伝える」方法に逃げた挙句、失敗してしまいます。
目で伝えようとしても全く気づかない子、無視する子。
あるいは「何か言いたいの?」と逆に聞き返してくる子…。
そして結局さいごにはこう言ってしまう。
「さっきから先生は、あなたのことをずっと見ています。気付かなかったの?」
「目力」は本当に効果的なのでしょうか?
それとも、私たちは
何か大切なことを見落としているんでしょうか?
「目力」が通じる前提とは
「口で注意せず『目で伝える』」という指導法。
「目は口ほどにものをいう」という
格言と共に語られることも多いです。
しかし、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。
この方法が教室で効果を発揮するためには、
実は大前提があります。
それは「あなたと子どもの間に強い信頼関係があること」です。
子どもがあなたの表情や視線の意味を理解できるのは、
あなたとの関係性が十分に築かれているときだけ。
これはクラス児童というよりも、
教育実習に行った時のことを思い出してみると
わかりやすいかも知れませんね。
信頼関係のない状態で「目で伝える」と、
子どもには何が伝わるでしょうか?
「先生が怖い顔をしている」
「なんか怒ってるみたいだ」
「また俺のことをマークしてる」
厳しい現実ですが、
本当にこの程度の情報しか、
彼らには伝わっていません。
言葉で説明せずに、『目』のみで
抑え込むことができれば理想ですが
それだけでは、何がいけないのか?
どうすればいいのか?
子どもには伝わらないんですね。
「コントロール」は教育ではない
「生徒を見ることで、コントロールする」
この概念に、私は強い違和感を覚えます。
コントロールが目的なら、
それは教育じゃなくて支配です。
保護者の立場から考えても、
子どもの成長を願ってるのであって、
「従順さ」を求めてるわけじゃない。
確かに、「厳しさも必要」という意見もあるでしょう。
これは教室で毎日子どもたちと接したり、
また家庭に帰って我が子と接する中で感じる
「紛れもない事実」です。
しかし「厳しさ」と「コントロール」は全く別物。
厳しさとは、子どもの成長のために必要な枠組みを示すこと。
一方でコントロールは、教師の都合のために子どもを従わせること。
大人が子どもをコントロールして悦に浸るだけでは
なにも解決していないし、
そこに「成長」という変化は起こり得ないです。
「目で伝える」が通じない子どもたち
やんちゃ君にとって最もキツいのは、
「わかってもらえなかった」という孤独感でしょう。
「目力」で押さえ込まれただけで、
自分の気持ちや背景については
理解してもらえる機会すらなかったという絶望感。
私が出会ってきた子どもたちの中にも、
様々な理由で「目で伝える」方法が通じない子がいました。
- 大人の表情を読み取るのが苦手な子
- 過去の経験から教師の視線に極度の警戒心を持つ子
- 集団の中でも自分に向けられた視線だと気づかない子
- そもそも視線を合わせるのが苦手な子
これらの子どもたちに
「目で伝える」だけでは、何も伝わりません。
「マイナス的な言葉を避ける」という考え方も一理あります。
しかし、それを極端に解釈して
「何も伝えない」ことになれば、子どもは
「なぜダメなのか」を知る権利を奪われてしまいます。
「伝える」ための多様なアプローチ
子どもに本当に「伝える」には、多様なアプローチが必要。
一人ひとりの子どもに合わせた伝え方を持つことが、
真のプロフェッショナルだと思うんです。
たとえば、以下のような対応ができます。
個人的アプローチ
質問の形で考えさせる
「今、なにをする時間だっけ?」
「このおもちゃで遊ぶのは、どんな時間が適切だと思う?」
「周りの人がどう感じるか、考えてみたことある?」
なぜ効果的なのか?
子どもが自ら答えを見つけることで、
内発的な理解と動機づけが生まれます。
押し付けられた感が少なく、
プライドを守りながら気づきを促せるのです。
「〇〇しなさい!」と命令されるより、
自分で考えて出した答えの方が、
子どもの心に残ります。
そして何より、思考する習慣が身につきます。
「心配している」というスタンスで話す
「どうした?大丈夫かい?」
「あなたが集中できていないのを見て、心配になったんだ」
「宿題を忘れるのが続いてるけど、何か困っていることある?」
なぜ効果的なのか?
これは、敵対関係ではなく、
味方だという安心感を与えることが目的です。
子どもは「叱られている」ではなく
「心配されている」と感じることで、反抗心を和らげ
教師の言葉を受け入れるハードルを下げ始めます。
特に反抗期の子どもは、大人からの指示に敏感。
「心配している」と伝えることは、
子どものプライドを傷つけず接しやすいのでオススメです。
集団的アプローチ
全体に伝える効果的な場面
- クラス全体の課題の場合
- やんちゃ以外も多くの子が関わるトラブルの場合
- やんちゃのプライドを守る必要がある場合
基本的なことですが、
特定の子を名指ししないで伝えることで、
やんちゃな子もプライドを保ちながら聞くことができます。
なぜ効果的なのか?
「自分だけ叱られた」という孤立感や恥ずかしさを感じさせずに、
必要なルールを伝えることができるからです。
また、クラス全体のルールとして共有することで、
他の子どもたちからの理解も得やすくなります。
「みんなに話しているように」さりげなく伝える
やんちゃ君の近くで、
全体に向けて話すように注意点を伝える方法です。
例えば、おしゃべりしている子の近くに行き、
「良いね!集中して取り組んでる人が多いな」と、
その子だけでなく周囲の子も含めて伝えます。
直接的な注意よりも受け入れられやすいのです。
特にプライドが高く、面子を重視する子には、
周囲に聞こえるような注意はかえって反発を招くことがあります。
「みんなへの呼びかけ」という形をとることで、
反抗心を最小限に抑えることができます。
継続的アプローチの重要性
一度では伝わらないことを理解する
子どもに何かを伝えるとき、
一度で完璧に理解してもらえると思うのは幻想です。
様々な切り口から
何度もアプローチすることが重要。
大変なことですが、それが子どもというものです。
また、子どもの「やんちゃ行動」の背景にある理由を考え、
対策を練り直す柔軟性も必要です。
多くの場合、やんちゃ君の行動には「理由」があります。
浅い視点でみれば、すぐに行き着くのは
「承認欲求」「自己顕示欲」あたりでしょうか。
シンプルに言えば「わがまま」という一言で
まとめられそうな類の行動です。
でも、その背景がどこにあるのか?を考えれば
「本人の解決すべき課題」がどこにあるのか、
つまり本質部分が見えてくる。
過去(教師や友達との関わり)なのか、
現在(目の前でおきたトラブル)なのか。
その両方か。
そして過去なら、何年前からの因果関係なのか。
単に「やめなさい」と言うのではなく
「なぜそうするのか」を想像するクセをつけることが重要です。
重要なのは「マイナスだから伝えない」ではなく、
「マイナスでも、伝えるべきことはしっかり伝える」こと。
そのための信頼関係づくりや、
様々な切り口から何度もアプローチすることが、
子どもの成長につながります。
「友達先生」への誘惑を超えて
「目力」に頼る指導法の裏には、
多くの場合「友達先生」への憧れがあるように思います。
「注意すると嫌われるかも」
「うるさい先生だと思われたくない」
「子どもの機嫌を損ねたくない」
こうした気持ちは、非常によく分かる…
私ももちろん、そうでした。。。
だからこそ、言葉による明確な指導を避け、
曖昧な「目力」に頼ってしまうのではないでしょうか。
しかし、子どもが本当に求めているのは
「友達のような先生」ではなく、
「信頼できる大人」なんですね。
時に厳しく、時に優しく。
しかし常に子どもの成長を第一に考える教師の姿勢こそが、
子どもの心を動かします。
多様なコミュニケーション手段を持つプロフェッショナルへ
「目で伝える」ことは、教師の持つコミュニケーション手段の一つに過ぎません。それだけを過信せず、以下の点を心がけましょう。
- 子どもとの信頼関係をベースにする
- 多様な伝達手段を持つ(言葉、表情、ジェスチャー、個別対応など)
- 「コントロール」ではなく「育てる」視点を持つ
- 子どものタイプに合わせた伝え方を工夫する
- 伝えるべきことは、適切なタイミングで必ず伝える
信頼関係を築くためには、まず子どもの話に耳を傾けることから始めましょう。子どもの気持ちや考えを尊重し、理解しようとする姿勢が、信頼関係の土台となります。
また、やんちゃ行動の背景を理解するためには、子どもの家庭環境や友人関係、得意なことや苦手なことなど、多角的な視点で子どもを見ることが大切です。
「伝える」技術を磨くためには、自分の言葉遣いや表情、身振り手振りを意識して観察してみましょう。録画してみるのも一つの方法です。自分がどのように伝えているかを客観的に把握することで、改善点が見えてきます。
教育の本質は「コントロール」ではなく「育むこと」
教育の本質は「コントロール」ではなく「育むこと」です。子どもたちの未来のために、私たち教師は常に自らの指導法を見直し、進化させていく必要があるのではないでしょうか。
「目で伝える」技術も、信頼関係という土台の上に築かれたとき、初めて効果を発揮します。しかし、それだけに頼るのではなく、様々なコミュニケーション手段を持ち、子ども一人ひとりに合った方法で「伝える」ことができる教師こそが、真のプロフェッショナルです。
次回は「やんちゃに『通らない指示』を出さない」という対応法について考えていきます。この対応法の何が問題なのか、そしてどうすれば本当の意味で「子どもに伝わる指示」が出せるのか、掘り下げていきましょう。
PS.
先日、とある小学校の授業参観で、ベテラン教師の「目力」を目の当たりにしました。子どもたちは彼の視線の意味を完璧に理解し、授業は見事に統制されていました。
しかし、その中で一人だけ、「目で伝える」メッセージが届かない子がいたのです。
このベテラン教師はどうしたでしょう?
彼は、その子のところへ歩み寄り、さりげなく肩に手を置き、小さな声で言葉をかけました。つまり、その子に合った異なるチャンネルで伝えたのです。
これこそが、真のプロフェッショナリズム。
「目で伝える」が通用しないとき、別の方法で伝える柔軟性を持つこと。この柔軟性こそが、一人も見捨てない教育の核心ではないでしょうか。
みなさんの教室にも、様々なコミュニケーションスタイルを持つ子どもたちがいるはずです。明日からの実践で、ぜひ多様な「伝え方」を試してみてください。そして、どんな方法が効果的だったか、ぜひコメントでお知らせいただければ嬉しいです。