“ダメだった自分”を超えたいあなたへ

このブログの全ては、自分を責めていた“あの頃の私”に向けて書いています。

『監督に言うよ』対応は教育の敗北 ── やんちゃな子の本当の力を引き出す指導法とは?

【よくある『やんちゃ対応』11の間違い】

Part⑤:やんちゃ君の弱点を見つけましょう。彼はプライドが高いので、弱みにつけこまれるのが嫌。「怖い監督」を引き合いに出すなど、指導に利用しましょう。

 

『弱み』で脅す…? それ、指導じゃなく"脅迫"です

「やんちゃな子の弱みを見つけて、それを利用して指導する」

 

あなたはこの方法を聞いたことがありますか?

もしかしたら一度は実践したことがあるかもしれませんね。

 

でも、これって本当に「指導」なのでしょうか?

批判を承知で、15年の教師経験から得た知見をもとに

私が断言します。

 

やんちゃな子の弱みを探して利用するのは
『指導』ではない。

紛れもない『脅迫』です。

 

この「弱点探し」は、教育現場に驚くほど蔓延しています。

そして、それが生み出すのは「負の遺産」だけ。

 

なぜなら、子どもの弱みを利用した「指導」は、

表面的には効果があるように見えても、

誰も幸せにしないからです。

 

※「誰も幸せにしない教育」について、
以下にも詳しく書いています ↓ 

 

www.teacher-trigger.com

 

リュウジ、野球の監督に言うよ?」── クラスで見た"弱み利用"の現実

こんな場面、イメージできますよね?

 

算数の時間、またリュウジが立ち歩き始めた。

ノートも開かず、椅子を投げ出し、周りの子をニヤニヤ笑わせながら教室を闊歩している。

注意しても、一瞬だけこちらを見て、また好き勝手を始める。

 

「もう何をやっても効かない...どうすれば言うことを聞くのか...」

 

そんな時、職員室で前年度の担任から引き継ぎの言葉。

 

リュウジは野球部の監督を恐れています」

「監督の名前を出せば言うことを聞きますよ」

 

確かに効果はあるかもしれない。

リュウジは野球が大好きで、監督の言うことだけは聞いている。

監督の名前を出せば、渋々体だけでもこちらを向くかもしれない。

 

でも、これは絶対にやってはいけない。

 

批判を承知でいうと、浅はかを通り越して

怒りすら覚える「クソアドバイスです。

 

何の問題解決にもならないどころか、

むしろ、関わった人物(担任、リュウジ、監督、親)

全員が不幸になる『地獄への階段』なのです。

 

「弱み利用」の本質 ── それは教師としての"責任放棄"

この「弱み利用」の本質的な問題点を、3つ挙げます。

 

1. 恐怖で支配する関係性の構築

子どもの弱みを探して利用するということは、恐怖心を使って従わせること。

考えるまでもなく、これで信頼どころか良好な関係性は絶対に生まれません。

 

生まれるのは「恐怖」と「不信」だけ。

 

思い出してみて下さい。

 

・スーパーで走り回る子ども

・買い物客にぶつかっても、そのまま走り抜ける

・売り物のキャベツを手でベタベタ触る始末

そして、

・その子どもの横で、普通に買い物をしている親

その挙げ句、

 

店員さんが注意して立ち去った瞬間

「ほら、辞めなさい。また店員さんに怒られるよ!」

と我が子を怒る。

 

こんな親の姿を見たことはありませんか?

 

「監督に言うよ」対応は、これと同じ構図です。

 

自分が対応すべきことを放棄し、

他人(店員や監督)に"悪者役"を任せて、

自分は「いい人」でいようとする

 

あえて強い言葉で言えば卑劣な行為です。

 

 

2. 児童の可能性を潰す視点

そもそも、やんちゃな子を

「潰すべき対象」

「取り締まる、管理する悪者」

そう見なす視点そのものが、解決を遠ざけます。

 

「この子の行動はなぜ?」という視点ではなく、

「どうやって押さえつけるか?」という視点。

 

これでは子どもの成長の可能性を殺してしまいます。

 

3. 負の連鎖を生み出す仕組み

話題に出された側の「監督さん」にも悪影響があります。

 

監督の心理を想像してみましょう。

おおよそ、以下のようになるはずです。

  1. 教員に依頼された → 教師から頼られている
  2. この子は学校の先生ですら手に負えない
  3. でも、俺の言うことならこの子は聞く
  4. つまり、俺はこのやんちゃを引き続き「怖さ」で押さえつけよう

 

結果、監督はジャイアンのように指をボキボキ鳴らし

「やんちゃ〜聞いたぞ〜!覚悟しろ!」

「俺の目の黒いうちは、学校であっても野球であっても、逆らうことは許さん!」

となるわけです。

 

実際、これが「◯◯部のエース的存在が、学年イチのやんちゃと言われ続ける原因」の1つだと、私は確信しています(これまで多くのそういう児童を担任してきた経験知です)。

 

※ちなみに、「部活動の監督( = 外部の人間)を児童の成長につなげる」事自体は、ものすごくポジティブな効果につなげられます。

子どものやる気にガッ!と火を付け、かつその子の良さや頑張りをクラス全体にブワッ!と一気に広げるだけの力があります。具体的な方法を知りたい方はぜひコメント欄で教えて下さい^^

 

発想の転換 ── やんちゃ児童は"問題児"ではなく"カリスマ"

では、どうすれば良いのか。

 

その答えは、やんちゃな子を「問題児」ではなく

 

インフルエンサー = 影響力のある主張者

・溢れ出るエネルギー・行動力・承認欲求を持つカリスマ

 

として捉え直すことにあります。

 

ある心理学者によれば、

子どもは周囲の「影響力のある人物」の行動を

模倣する傾向があるそうです。

 

クラスの中で影響力を持つ「やんちゃな子」は、

その特性を活かせば最高の「クラスリーダー」

になる可能性を秘めている。

 

他の児童も一緒に引き上げてくれる場面だってよくあります。

例えばこうです(担任の言葉かけだと思って下さい)。

 ↓ 

「昨日、野球の練習を見たよ」

「ほんとに、リュウジは野球得意だよな」

「どうやって、そこまでうまくなったの?」

 

リュウジは「別に」とか「普通だよ」とか言うでしょう。

そこで

 

「練習以外にも素振りとかってやってるん?」

「キャッチボールは、お父さんに付き合ってもらってるんだろ?」

「大変だな…って思うことってないの?」

「逆に、これまで一番楽しい!最高!って思ったのは?」

 

こういう、「男と男の会話」みたいなやりとりをするんです。

さらに

 

「やっぱり何かに秀でている人には、ちゃんと理由があるんだよな」

 

これを帰りの会で話してみると、どうなるでしょう?

 

帰りの挨拶の際に

リュウジくん、今日も野球頑張るのかい?」

「ファイトだぞ!」

「みんな、今日も自分の成長とチームの勝利のために努力するリュウジくんに、拍手〜!」

 

とかやってみると、どうなるでしょう?

 

リュウジくんへの見方は

「自分の目標に向かって頑張れる人」

「辛い練習にストイックに立ち向かう人」

に少しずつ変わっていきます。

 

また、そういう「主人公感」に憧れ、

「よし、自分もやってみよう!」と

ポジティブな影響を受ける子も出てくるかもしれませんよね。

 

「監督にチクるぞ」の対応と比べ、
どっちが幸せな未来に向かってそうでしょうか?

 

また、このときのリュウジくんの表情を
今すぐに見たくなってきませんか?

 

視点を変えるだけで、

担任のハッピー度も全く変わってきます。

 

※大前提として、このやり方は「普段からリュウジ以外の子に対しても、十分に関わっていったうえで」より効果を発揮する方法です。

1人の子ばっかりにこういった「特別扱い」的対応を続けてしまうと、普段から頑張っているいわゆる「普通の子」は「…え、」「結局、担任が興味あるのはリュウジだけかよ」となってしまうし、何よりその子に対して失礼です。

そうなると、クラスのバランスが崩れ、やっぱりクラス全体のいいムードには繋がりにくい。

常日頃から「35人全員の頑張りに気を配る意識」が必須です。

※以下の視点がひとつのヒントになると思います ↓ 

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大切なのは以下の3つ。

  1. 「弱み」ではなく「強み」に目を向ける
    • やんちゃな子の行動力、影響力、主張性は実は「強み」
    • その強みをどう活かすかを考える
  2. 主導権を明確に保ちながら、可能性を伸ばす
    • 大前提として、クラスの主導権は教師側になければならない
    • ただし、弱点を「探す」というつまらない時間を過ごす必要はない
    • 主導権を明確にしつつ、子どもの可能性の芽を摘まない姿勢が重要
  3. インフルエンサーをクラスの資源として活用する
    • クラスルールを「一緒に」作り、やんちゃな子に主体性を持たせる
    • 責任のある役割を与え、その行動力を建設的な方向に向ける
    •  

「やんちゃ」から「リーダー」へ 。私が見た変化の瞬間

私のクラスでも、かつてリュウジのようなやんちゃな子がいました。

最初は「どうやって押さえるか」と考えていました。

でも、ある日気づいたのです。

 

「この子はクラスで最も影響力がある」

「彼のエネルギーの向きを変えれば、クラス全体が伸びる」と。

 

彼の強みは

・周りを巻き込む力

・エネルギッシュさ

・目立ちたい欲求

だと見立てました。

 

そこで、お楽しみ会の司会や、
スポーツ大会の作戦会議のリーダーを任せたのです。

 

体育の球技の授業で「チームキャプテン」に任命したこともあります。

※この話はけっこう難易度高めなので、詳しくはまた別記事で書こうと思います。

 

最初は驚いていましたが、徐々に責任感が芽生え、

クラスを盛り上げるための動きが見られるようになりました。

 

「明日、みんな笑ってくれるかな」

「笑わせてやるぜ!」

みたいな強気発言をしていたこともあります。

 

朝の会で元気よく「おはようございます!」と

率先して挨拶をする姿。

 

困っている友達に自ら声をかける姿。

 

授業では質問に積極的に答えるようになり、

わからない友達に教える姿も見られるようになりました。

 

放課後のクラブ活動でも「チームを奮い立たせ、引っ張る立場=キャプテン」として活躍するようになったことも、無関係ではないと個人的に勝手に思っています。

 

もちろん、たった1つの取組みだけの賜物ではなく、
根気強い関わりと、1年間の多くの時間を費やしました。

 

でも、この変化の背景には、彼の

「弱み」ではなく「強み」

目を向けたことがあったと思っています。

 

実践のためのポイント :やんちゃな子の「強み」を活かす3つの視点

1. やんちゃな子の「強み」を見抜く観察ポイント

以下は、あくまで目安です。すこし抽象度を上げて載せてます。

本人の様子や性格等を深く観察していくことで、本当はさらに「濃い役割」を任せることも出来ます(もちろん、本人と確認を取った上で、ですが)。

 

「この子の強みって…?」と、具体的に相談したい方は、ご遠慮なく連絡ください^^

  • 人を惹きつける力がある
    • クラスメイトが彼/彼女の周りに集まる
    • 発言に対して周囲が反応する

  • 行動力が高い
    • 思ったことをすぐ行動に移す
    • 失敗を恐れない冒険心がある
    • 衝動性がある
  • 主張性が強い
    • 自分の意見をはっきり言える(言ってしまう)
    • 不満や意見を我慢せず表現する

2. 強みを活かす具体的な役割設定

  • クラス運営での役割
    • 朝の会や帰りの会の司会
    • 行事の企画リーダー
    • チームのまとめ役

  • 授業内での活用
    • グループディスカッションのリーダー
    • 授業の導入部分での「つかみ」役
    • 分かりやすい例えを考える役割

3. 『教室での主導権』を手放さないためのコツ

弱点を利用せずとも、こういった「表面的な方法」でも、主導権は十分に確立できます。それどころか、子どもの可能性を伸ばしながら、より強固なクラスの絆を築けますよ。

すでにあるクラスのルールや、先生の学級経営じょう大切にしたい視点もあるかと思うので、あくまで参考程度にですが載せておきますね^^

 

①「対等な人間」として接する

他の子も同様ですが、やんちゃな子は特に本人の「人間性」「プライド」等へのリスペクトをもった関わりを意識しましょう。

正直、担任の話は聞いてなくても、「やんちゃ君」の何気ない言葉はしっかりと聞いているのが子どもです。

その点において、やんちゃ君はクラス児童たちにとって既に
教師以上に十分な「何者か」です。

※「何者か」については、以下の内容もかなり重要な視点です ↓ 

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そのあたりを考慮し、リスペクトをもった関わりをすれば、彼らにはしっかり伝わります。

かなり抽象的な話になりますが、「男気」的なイメージを意識すると良いです。

 

②「先輩と後輩」みたいなイメージで接する 

私の場合ですが、「先生と生徒」というよりは、こっちの方がしっくりくる気がします。「教師として」接しようとすれば、やんちゃ君にとって、担任はまだ「何者でもない」場合がほとんどです。

一方で「人生の先輩として」だと、圧倒的に大人の方が経験知がある

であれば、関係性がつくられるまでは、これぐらいの意識の方がお互いに馴染みやすいように感じてます。

※「威張れ」と言ってる訳ではありません。

 

この文章において、しっかりと伝わるかは微妙ですが

「ちゃんとしなさい!」

と言うよりは

「大丈夫かい?」

「私の経験上、こういう場合は◯◯だと思うんだけど」

みたいなスタンスです。

 

しっかり関係性築けていけば、自然と

「クラスのルールについては、俺から特に言うことはないな」

「ちゃんと担任は見てるし、話も聞いてくれる」

「ちゃんと俺のことを考えてくれてる」

「なら、今回は仕方ないか」

みたいな感じで、

次第にスムーズに受け入れてくれるようになっていきます。

 

③強みを認める声かけを意識する

 

「君のそのエネルギーを、クラスのために使ってほしい」

「あなたの意見はいつも面白いね。今度はこっちの方向で考えてみない?」

「君がAさんを励ますとしたら、何て言う?」

「君の、Aさんに対する『友達視点』からのアドバイスが知りたいんだ」

など。

あなたを信頼しているからこそ、頼りにしている。

 

そういう関わり方ですね。

 

余談ですが、やんちゃ君は子どもだけあって

「クラスの裏事情」

「担任には見せない、普段の子どもたちのリアルな会話」

に詳しかったりします。

 

表に出にくい「いじめの兆候」などを

教えてくれたりする場合もあります。


そこから、担任の見落としていた出来事に気付けることは、本当に多い。

 

やんちゃ君も、しっかり悩んでいます。

 

子どもの世界は、大人と同じように

複雑で、かつ繊細。

 

大人の一方的な決めつけのみで

35人もの人間をまとめることなんて出来ません。

 

彼らに十分、頼っていきましょう。

 

 

子どもの可能性を信じてみませんか?

あなたの教室のやんちゃな子も、

実は未来のリーダーかもしれません。

 

弱点を探して脅迫するのではなく、

強みを見つけて育てる教師になれば、

子どもたちは必ず応えてくれます。

 

今、目の前にいるやんちゃな子に対して、

どんな視点を持つかであなたのクラスの未来は大きく変わります。

 

「弱点探し」という名の迷路から抜け出し、

子どもの可能性を信じる勇気を持ってください。

 

苦しい今だからこそ、視点を変えてみる勇気を。

 

・子どもの弱みを探す教師に、強い教室は作れない。

インフルエンサーを潰すな、方向づけろ。

・脅迫が「指導」ならば、一体「何を育てる」のだろうか。「従順さ」か?

 

次回は「やんちゃを孤立させて戦う」という間違った対応について考えます。

孤立させることで生まれる教室の闇と、それを解消する方法を具体的に提示します。お楽しみに。

※更新しました。今回の内容とあわせることで、理解はよりいっそう深まります。

こちらです ↓ 

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追伸:

前年度担任から「リュウジは野球部の監督を恐れてる。監督の名前言えば言う事聞きますよ」と引き継がれた時、正直、とても違和感を覚えました。

思い返せば、私自身も新任時代に同じようなアドバイスをもらったことがあります。「あの子は母親を呼ぶと泣き出すから、『お母さんに言うよ』で黙らせられるよ」と。

当時は経験不足から、一度だけ試してしまいました。確かに、その子は黙りました。でも、その瞬間の彼の目に浮かんだ「裏切られた」という表情が、今でも忘れられません。

そこから生まれたのは「言うことを聞く子ども」ではなく、「心を閉ざした子ども」でした。その後、彼との関係修復に何ヶ月もかかったのです。

実はこの経験が、私の教育に対する原点となっています。

 

「弱みに付け込む」ではなく「強みを活かす」

これは1人の教師として、また親として。

大切な第一歩目だったと思います。

 

今、教室で苦戦しているあなたにも、ぜひ「やんちゃ=問題児」という固定観念から抜け出してほしいと思います。その子の中にある強さ、可能性、エネルギーを見つけ出してください。

私は日々、現場で子どもたちと向き合いながら、こうした教育の理想と現実の間で葛藤しています(現在育休中)。

このブログが、同じ思いを持つ教師の方々との接点になれば嬉しいです。

この視点に共感いただける方は、ぜひコメントやメッセージをください。ぜひ、もっと深く語り合いたいと思っています。

一人でも多くの子どもたちが、自分の強みに気づき、輝ける教室づくりを、一緒に目指しましょう。