誰かを指導するとき絶対に言ってはいけないセリフを言った瞬間、相手の脳内は"破滅的状態"に
「そんなこともできないの?」
この一言を言った瞬間、相手の脳内で何が起きているか、あなたは知っていますか?
学校現場で子どもたちと向き合ってきた私が断言します。
この言葉の破壊力を、多くの人が理解していません。
そもそも、偉そうに言ってしまっていますが、私自身がそうでした。
この言葉がどれほど相手を傷つけ、成長を阻害するかを、痛いほど学んだ一人です。
偶然聞いてしまった「制圧自慢」
休憩中の職員室にて。こんな雑談が聞こえてきました。
「リョウタがまた授業中に立ち歩いていたので、『そんなこともできないの?まだ1年生なの?』と言ったんです。そしたら、素直に座りました。やっぱり毅然とした態度が大事ですね」
周囲の教師たちは、一定の反応を示しつつ「ときには厳しさも必要ですよね」と賞賛の声。
でも、私はそのときリョウタくんの表情を思い出していました。その日の彼は、確かに座っていました。でも、目は完全に死んでいた。授業には一切参加せず、ただじっと机に向かっているだけ。
これは「成功」なのでしょうか?
「勝つ」発想が生まれる本当の理由
そもそも、何で「そんなことも出来ないの?」と言いたくなってしまうのか?
実は、これには明確な構造があります。長いこと現場にいて気づいたのは、「やんちゃな子に「勝ちたい」と思う教師の心理です。
学級がうまくいかない。授業が成り立たない。保護者からのクレーム。管理職からのプレッシャー。
そんな中で、唯一「勝てる相手」が目の前のやんちゃな子だった。だから、その子を制圧することで、自分の「指導力」を確認しようとする。
でも、これは指導ではありません。大人の感情のはけ口です。
私自身も、恥ずかしながら同じことをしてしまっていました。
当時のクラスにソウタくんという、とてもエネルギッシュな子がいました。授業中によく席を立ち、友達と話し始める。私は毎回イライラして、「ソウタ!座りなさい!」と厳しく叱っていました。
そして、彼が渋々座ると、心の中で「やった、言うことを聞かせられた」と感じていたんです。
でも、ある日気づきました。ソウタは確かに座るようになったけれど、授業への参加意欲は完全に失われていた。彼の「学ぶ喜び」を、私が奪ってしまった。
これが「勝ちたい = 無意識のマウント」の正体であり、マイナスな結果にしか繋がらない。
表面的には従順になるけれど、内面では諦めと無力感が育っている。
職場でも同じことが起きている
実は、この構造は職場でも全く同じです。
「部下をコントロールしたい」と思う上司の心理。プレッシャー、ノルマ、上からの圧力。そんな中で、唯一「勝てる相手」が目の前の部下だった。
だから、厳しく叱ることで「指導した」気になる。でも、部下の心の中では何が起きているでしょうか?
「どうせ何をやっても怒られる」「自分で考えるより、言われたことだけやろう」「この上司には本音を話せない」
まさに、ソウタくんと同じ状態です。
表面的には従順だけれど、内面では成長が止まっている。
実際に効果のあった指導は?
では、どうすればいいのでしょうか?
ソウタくんとの関わりを変えたきっかけは、ある小さな発見でした。
「ソウタ、どうしたの?」
すると、彼は意外な答えを返しました。
「先生、この問題の意味が分からなくて...」
その瞬間、すべてが変わりました。彼は「授業を妨害したい」わけではなかった。「分からないことがあって、でもどう聞けばいいか分からなくて」困っていただけだったんです。
分からないことの裏には、必ず理由がある。その理由を理解することが、本当の指導のスタートでした。
「分からないところがあったら、いつでも聞いてね。一緒に考えよう」
後から振り返ってみると、この一言から、ソウタの表情や授業態度は、変化していくこととなりました。
この経験から学んだことは、職場でも同じように応用できます。
「部下の行動」の裏にも、必ず理由があります。
- 仕事の進め方が分からない
- 期待値が不明確
- 過去の失敗がトラウマになっている
- 上司に相談しにくい雰囲気を感じている
でも、「なぜできないんだ」と叱った瞬間、部下はその理由を話せなくなります。「怒られるから」「能力がないと思われるから」という恐怖で、口を閉ざしてしまう。
そして、問題は解決されないまま、同じミスが繰り返される。
「責める」のではなく、「理解する」こと。結局のところ、これが実際に効果を感じられた指導でした。
追記:
こうした現場での気づきや、具体的な指導法について、メルマガでより詳しくお伝えしています。「理解する指導」の具体的な手法や、実際の現場での応用例など、ここでは書ききれない内容も含めて配信中です。
教育現場で15年培った「人を育てる本質」を、職場でも活用してみませんか?^^